中小企業が輸出入する時に考慮すべき10のコスト・規制

中小企業が輸出入する時に考慮すべき10個のコスト・規制

中小企業にとって、輸出入にまつわるコストや規制を検討するのは大変な事です。本記事ではこういった輸出入に関する検討事項や落とし穴を10種類ご紹介致します。目次を御覧頂き、クリック(タップ)頂ければ興味のある項目に直接飛ぶこともできます。

基本的に輸出入の前に2つの項目で検討致します。一つはコスト、もう一つは規制です。またコスト、規制ともに輸出国、輸入国それぞれで発生しうる為、分類としてはこちらの表の通りとなります。

#項目発生場所コスト/規制内容
1コスト輸出国VAT(消費税)
2コスト輸出国輸出関税
3コスト輸出国輸出ライセンス費用
4コスト輸入国輸入関税
5コスト輸入国VAT(消費税)または相するもの
6コスト輸入国輸入ライセンス費用
7規制輸出国基本的な輸出規制
8規制輸出国暫定的な輸出規制
9規制輸入国基本的な輸入規制
10規制輸入国暫定的な輸入規制
輸出入に関するコストと規制一覧表

#1 輸出国のVAT(消費税)

概要
輸出にあたり、VAT(Value Added Tax、いわゆる消費税)は通常請求されないまたは還付されます。ただし一部の国では国内外の販売に関わらず一律でVAT課税される事もあります。

コメント
下記のスクリーンショットのように「VAT, Export, 国名 (例 Philippines)」と検索頂くとヒントを見つけられると思います。勿論輸出するパートナーに相談したり、貿易支援団体、日本なら JETRO でご確認頂くのも有用です。

こちらの検索結果から、フィリピンの輸出時のVATは0% か 12%とわかります。そこから更に調べていく手がかりがつかめました。

#2 輸出国の輸出関税

概要
輸出国が自国のモノを国内消費に回すためなどで輸出関税が発生する事もあります。弊社では鋼材(還付の廃止)や穀物でそのようなケースを確認しております。

コメント
輸出関税は新興国で発生することがあります。下記スクリーンショットのように「Export Tax, 国名 (例 Bangladesh)」と検査頂くとヒントを見つけられると思います。VAT同様、輸出パートナーに相談したり、貿易支援団体、日本なら JETRO でご確認頂くのも有用です。

こちらの検索結果から、バングラディッシュの輸出関税は0.03486%~0.5%とわかります。そこから更に調べていく手がかりがつかめました。

#3 輸出国の輸出ライセンス費用

概要
輸出・輸出通関用にライセンスが必要なケースもあります。もし輸出パートナーがライセンスを保有している場合、ラインセンスを保有している会社経由で輸出する事になります。その場合エキストラで費用が発生する事になります。

コメント
輸出国でライセンスが必要な国の場合、輸出パートナーが大きな規模の製造業であればライセンスを保有している可能性があります。小規模な企業だとラインセンスをもっていない為、ラインセンスを保有している企業経由で購入する事になります。

#4 輸入国の輸入関税

概要
輸入品目によっては、輸入関税が課される場合があります。

コメント

輸入関税を確認するには2つのステップがあります。まず最初に輸入品目のHSコードを調べる必要があります。HSコードとは商品の名称・分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)に基づいて定められたコード番号です。HSコードは、あらゆる貿易対象品目を21の「部(英語でSection)」に分類され、HSコード自体は6桁の国際的に統一された番号ルールで成り立っています。最初の2桁は「類(英語でChapter)」、最初の4桁は「項(英語でHeading)」、6桁全てで「号(英語でSub-Heading)」と呼ばれております。また2~4桁国によって追加され、それらは「統計細分(英語でLocal ClassificationまたはStatistical Classification)」と呼ばれております。例として、下図のように英国のHSコードをご紹介致します。続いて、HSコードに基づく輸入関税を確認頂けます。関税費用を計算される際はご注意下さい。関税費用はCIF価格x関税率となります。CIFは輸入製品価格+物流費+輸送保険費となります。関税費には物流費も含めて計算する必要があります。EPA(経済連携協定)が輸出国・輸入国で締結されている場合、関税率は低減されます。

英国HSコード例
HS コード例

#5 輸入国のVAT(消費税)

概要
仮に関税が発生しないとしても、実質VAT(消費税)に相当するモノが全ての輸入品に課税されます。

コメント
厳密にはVATではないのですが、実質VATにあたるものが輸入時に課税されます。VATは(CIF価格+輸入関税費)xVAT税率 またはCIF価格x(1+輸入関税率)x(1+VAT税率)で計算できます。各国のVAT税率はこちらで見えます。

#6 輸入国のライセンス費用

概要
輸入にあたりラインセンスが必要な国もあります。ライセンス取得で費用が発生する場合もあります。

コメント
ライセンス保有は輸入側パートナーまたは第三者どちらでもできます(具体的には商社、輸入企業、または第三者企業)。 最初に輸入側パートナーにラインセンス取得をご相談するのがよいでしょう。ただし、弊社では輸入ラインセンス自体が利権となっていた事を経験した事があります。特定品目の輸入ライセンスが現ラインセンス保有企業により保護されており、実質新規ライセンス保有が不可能でした。このような経験から、輸入側パートナー・または第三者企業とあらかじめラインセンス取得できるのかご確認頂くのをお勧め致します。 The license was protected by current license owners and practically impossible for new players in the market to obtain the license. So we recommend to check if your team can obtain the license.

#7 輸出国の基本的な輸出規制

概要
輸出規制は国際的な合意に基づき禁止されている・国として基本的に輸出禁止・規制されている品目があります。金属製品の例として、兵器等があります。また兵器利用が可能なセンサー等は兵器利用でない旨を証明する書類(非該当証明)を用意する必要があります。

コメント
基本的な輸出禁止品目は下記1)~5)です。金属製品だと4)に特に注意する必要があります。
1) 国内供給を確保する必要があるもの(例:血液製剤、配合飼料、うなぎの稚魚等)
2) 輸出取引秩序維持物質(例:漁労設備を有する漁船)
3) 社会通念上害となる品目(例:偽造通貨、麻薬、風紀を乱すコンテンツ)
4) 国際協定等に定められた貨物(例:軍用兵器、核燃料、絶滅危惧動植物)
5) 知的財産権侵害物品(例:模造品)

該当製品が輸出規制対象か調べる方法は「輸出、国名、規制、該当製品名/カテゴリ」または英語で「export, country name, restrictions, product name / category」で検索頂くのがおすすめです。

#8 輸出国の暫定的な輸出規制

概要
輸出規制の中には暫定的に自国の経済を守るため、特定の国に経済制裁を加える為に輸出禁止・規制されている品目があります。

コメント
例えば、インドネシアではリチウムイオン電池生産の原材料となるニッケル鉱石が輸出規制となっています。インドネシアの意図としては自国で製錬して(付加価値をつけて)輸出しようとしています。また、最近ではエヌビディアが米国政府により中国への輸出が禁止されたりしています。米国政府の規制としては安全保障上の理由としています。もし取扱われている金属材や化学材が少ない製造元で多くの人々に重大な影響を与えるようなものであると、輸出規制の対象になりえると考えておくのがよいかもしれません。ただし、輸出規制は政治的・経済的な理由で突然かかる為、あらかじめ見越しておくことは難しいです。おすすめとして、あらかじめ複数の製造元を現輸出国以外で確保しておく事です。特に現輸出国の貿易方針、地政学リスク、天災などが見込まれるのであれば猶更です。また、技術の進歩に伴い輸出規制品目が突然その価値を失う事もあります。例えば、あるレアメタルが自動車部品の表面処理で必須となっておりました。そのレアメタルは政治的理由により輸出規制となる可能性がありました。そこでそのレアメタルを使わない新しい表面処理手法が開発されました。そうするとそのレアメタルの需要が一気に落ちてしまったという事があります。

#9 輸入国の基本的な輸入規制

概要
輸入規制は国際的な合意に基づき禁止されている・国として基本的に輸入禁止・規制されている品目があります。金属製品でいうと、兵器運用ができる品目は規制対象になる可能性があります。規制に対し、輸入側で実際にモノが届く前に承認をあらかじめ得る必要があります。

コメント
基本的な規制は下記 1) ~7) となります。金属製品であれば1)、2)、6)、7)などが主な課題となります。
1) 輸出取引秩序維持物質(例:漁労設備を有する漁船)
2) 社会通念上害となる品目(例:偽造通貨、麻薬、風紀を乱すコンテンツ)
3) 国際協定等に定められた貨物(例:軍用兵器、核燃料、絶滅危惧動植物)
4) 知的財産権侵害物品(例:模造品)
5) 消費者の安全を害する恐れがある品目(例:PSE、電波法、CCC、UL等の対象製品)
6) 一般的な国毎の輸入規制(例:インドBIS、インドネシア輸入ライセンス、イラク原産地証明の指定等)
7) 物流に関する規制(例:国際貿易における木製梱包材の規制等)

該当製品が輸入規制対象か調べる方法は「輸入、国名、規制、該当製品名/カテゴリ」または英語で「import, country name, restrictions, product name / category」で検索頂くのがおすすめです。それ以外だとフォワダー様にご相談されてみるのもよいと思います。

#10 輸入国の暫定的な輸入規制

概要
輸入規制の中には暫定的に自国の経済を守るため、特定の国に経済制裁を加える為に輸入禁止・規制されている品目があります。

コメント
新興経済国の中には自国経済を保護する為輸入規制が敷かれている事があります。例えば、中国では電源関連製品(コンセント、充電器、リチウムイオン電池等)を実質輸入禁止にしていたります。私の意見では、中国政府はこれら製品の輸出を奨励し、輸入に関しては抑えようとしていると思われます。同様に、欧米はいくつかの国に経済制裁を加えている国からの輸入を禁止している事もあります。また、一定種類の鉄鋼製品の輸入をアンチダンピング措置(輸出国の国内価格よりも低い価格による輸出(ダンピング輸出)が、輸入国の国内産業に被害を与えていると判断)により禁止している事もあります。こういった輸入規制は政治的理由等で突然発生する事もあります。輸入国のウェブサイトや時事情報を見ながら目を光らせる必要がありそうです。特定の輸出国が規制対象になる事もあるため、複数国から調達できるようにしておくのも有効です。

最後に

国を跨ぐビジネスでは多くの落とし穴があります。努力や投資額にも関わらず、商業化がうまく行かなかったり、輸出入に関するルールを違反してしまう事もよくあります。本記事を御覧になられた方は上記10点を少なくともご確認の上、実際のお取引を進められるのをお勧め致します。もしご質問や気になる事がございましたら、弊社にご相談下さい

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