日本のアルミダイカストの生産性を爆増する方法

 

アルミダイカスト生産性爆増方法とは

 アルミダイカストは、アルミニウムを高温で溶かして、金型内に圧入(ショット)し、冷却する事で、部品が生産できる製造手法です。 精密性、外観性、生産性に優れ、携帯電話の筐体から自動車部品等、幅広く使われています。

1回のショットにかかる時間(以下サイクルタイムと)は一般的に30秒から60秒程となっており、1秒のサイクルタイム短縮は生産性向上に直結し、年間でトータル何十時間も節約でき、1ショットあたりの原価低減はもちろん、残業時間短縮、人手不足改善、温室効果ガス抑制、余裕ができた時間で現場改善やQC活動をする事で更なる生産性・品質向上といった副次効果もあります。

その為、各社サイクルタイムの短縮に取り組んでおり、一般的には金型の冷却や、各動作を速くさせる仕組みを工夫したりしています。

本記事では、弊社が開拓した海外メーカーを通じて、「欧米では一般的だが、日本ではなぜか旧来のまま」となっているサイクルタイム短縮手法があったため、ご紹介したいと思います。

 結論から言うと、「プランジャーチップを安価な銅合金製に切り替える」です。この記事では1)プランジャーチップとは何か 2)日本市場におけるプランジャーチップの現状 3)弊社からの提案 4)今後の展望 についてお話したいと思います。

そもそもプランジャーチップとはアルミダイカスト設備の溶湯(溶けたアルミ)を押し出す先端部品となります。プランジャーチップで求められる性能として、下記があります。

・高温、高圧への耐久性

・巣対策の為への密封性

・サイクルタイム安定の為への熱伝導、寸法変化(熱膨張)に対する安定性

プランジャーチップは径毎に汎用で使える一方で、ダイカスト設備ユーザー(以下ダイカスター)によってはカスタマイズ品を外注して使う事もあります。また、プランジャーチップはかなりの高温・衝撃を受けるため、使ううちに摩耗し、交換が必要な消耗品となっています。プランジャーチップはダイカスト設備の品質・生産性を司る重要な消耗品であります。

プランジャーチップ使用箇所
プランジャーチップとは

日本市場におけるプランジャーチップの現状

日本においてプランジャーチップは鉄(合金鋼SKD61)が主流となっており、鉄溶射・再生・鉄と銅合金組み合わせなどもありますが、鉄を使えるだけ使ってショット時の異音や溶湯の流れ異常を現場で探知して都度交換し、古いプランジャーチップは廃棄というのが主な使われ方となっています。 商流は、おおよそ下記のようになっています。()内の商社は必要に応じてあったりなかったりします。プリンターのインクのように製造元の純正消耗品を買わないと設備本体が保証対象外になるというわけではなく、ダイカスト設備購入時にプランジャーチップの図面が付属されており、ダイカスターはその図面を参考に、それぞれ独自の商流でプランジャーチップを調達されています。 ダイカスト設備メーカー ー(設備メーカー商社)ー 国内チップメーカー

大手ダイカスター  ー(大手設備メンテ商社)ー 国内チップメーカー

中堅ダイカスター  ー(中堅設備メンテ商社)ー 国内チップメーカー 特徴的なのは、ダイカスターの多くが一握りの国内チップメーカーに依存している点です。プランジャーチップは消耗品故、コストの観点から鉄製が使われてきており、一部鉄以外も存在していますが使用は限られている可能性があります。 一方で、欧米においてのプランジャーチップは、鉄製から銅合金製に切り替わっております。その理由は生産性の高さで、ダイカスト設備メーカーも標準的に銅合金製プランジャーチップを採用しており、各種自動車メーカーも銅合金製プランジャーチップを採用しています。「日本では銅合金製プランジャーチップの存在は知っているが、コストの観点から一般的でない」と日本鋳造工学会で言及されています(参照)。ではなぜ銅合金製にすると生産性が上がるのかというと、アルミの凝固が早くなり、サイクルタイムが短縮される為です。具体的には下図のような溶湯(溶けたアルミ)を射出してから金型が開くまで、アルミを凝固させる際に銅合金だと放熱性がよく、凝固が早くなる(記載の秒はサンプル)という仕組みとなっています。また、銅合金は鉄よりも寿命が長く、交換による設備停止頻度が下がる、年間使用量は鉄よりも少ないというメリットもあります。

プランジャーチップ銅合金化メリット

弊社でも試算をしたところ、サイクルタイムを1秒短縮する毎に年間でダイカストマシン毎に45万円、時間にして94時間(設備・人件・消耗品費込み、2直前提)節約できると判明しました。複数ラインをお持ちのダイカスターであれば節約効果は大きなものとなります(申し込みフォームに入力いただければ、節約メリットを試算するエクセルシートを先着100名様に無料配布中致します)。

プランジャーチップ銅合金化 メリット試算結果
弊社による試算

弊社からの提案

そんな生産性は高いけど価格も高い銅合金プランジャーチップですが、弊社からの提案は安価な銅合金製プランジャーチップを実績豊富な海外メーカーから輸入する事です。メリットは原価低減(1ショットあたりの設備費、人件費、間接費低減)・作業者の方の残業時間削減・余剰時間創出(生産性・品質の改善に時間割り当て)、デメリットはプランジャーチップの年間コストの上昇が考えられます。メリットがデメリットを上回れば評価・切り替えの検討余地があると思います。また、海外からの輸入という事で・品質・コスト競争力・国内プランジャーチップメーカーへの影響が気になる方もいらっしゃると思いますので、それぞれ弊社の見解をご説明いたします。

銅合金プランジャーチップ
銅合金プランジャーチップ

・品質 輸入というとまず品質の懸念がでてくるかと思います。事実、プランジャーチップは高温・高圧に晒されるため、材料特性が優れていないと安定的に使えないようになっています。弊社が提案する海外メーカーは、プランジャーチップ専用の銅種類を複数生産し、欧米のダイカスト設備メーカーや自動車メーカーへの納品実績が豊富にあります。実績・ノウハウを踏まえ、日本でも品質的に通用できると考えております。

・コスト競争力 提案メーカーは材料から切削まで一貫生産している点が国内プランジャーメーカーと異なり、価格競争力があります。また、最近の円安やインフレの影響については、円安というのはドル円での話であり、製造国と日本では長期で円高トレンドとなっているため割安になっております。また、製造国でのインフレもありますが、円ベースでみるとインフレを相殺する形で円高となっており結果として購入時の価格への影響はそれほど大きくありません。 ・国内プランジャーチップメーカー様への影響 弊社は材料(棒材)をプランジャーチップメーカー様に販売する事も前向きに検討致します。提案メーカーもφ60mm以上のプランジャーチップのみの生産となるため、径や少量生産、輸送中のダメージリスク、商流変更の難しさなどのご事情に合わせて、国内プランジャーチップメーカー様との協業も前向きに検討したいと考えております。

今後の展望

銅合金プランジャーチップを採用する事は、それぞれの立場の方々で嬉しさがあります。 ダイカスト設備メーカー 製品付加価値の向上・製品差別化

ダイカスター 製造コスト低減 国内チップメーカー 新たな付加価値製品の追加・製品差別化

弊社でも共同で検証頂けるダイカスト設備メーカー・ダイカスター様、ご要望に応じたカスタマイズ品を設計・加工頂ける国内のプランジャチップメーカー様などのパートナーを探しております。弊社にご連絡頂ければ、サイクルタイム短縮による節約効果を無料でご確認頂けます。 日本だけでなくアジア一帯のダイカスト業界で生産性を高める事は、価値ある事だと信じております。是非、一緒に協業させていただければ幸いです。

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